お風呂から出て今度は。
 お互いバスタオル一枚を躰に巻き付けただけの格好で、洗面化粧台の前の籐スツールに腰掛けたあたしの髪を、由弦が手櫛で梳きながらドライヤーで乾かしてくれてる。

 ・・・・・・もうねぇ。あたしに何かしたくってしょうがないって顔してんの。嬉しそうっていうか、シアワセそうっていうか。
 喋れないワンちゃんだって表情が分かるのと一緒で、澄ましたフリして色んなものがダダ洩れてんだけど、あんた。内心でクスリ。

「髪、昔から伸ばさねぇよな。お前」

「そうねぇ。短い方が頭が軽いしさ、鈴奈さんみたいな美人なら似合うんだろーけど」 

「瑠衣も似合うに決まってんだろ」

 鏡越し。不本意そうに眼差しをすがめて、あたしを見てる由弦。
 当然だとでも言いたげに。

 あの界隈じゃクールなイケメンで通ってるらしい水上組の若頭が。こんな甘い男だって知れたら沽券に関わるんじゃないの? 
 ねえ、洋秋?