次の日の昼休み。
「柊」
教室に居たあたしを呼ぶ、五十嵐。
柚姫に行ってくると伝え、駆け寄る。
何も言わずにあたしを見て、廊下を歩き出す五十嵐。
滝田先輩と比べると無愛想だけど、いつもより雰囲気が柔らかい。
中庭の影に着くと、紙袋を差し出してきた。
「これ、豪さんに。お礼言っといてくれ」
やっぱり、口調もどこか優しい。
「はい。昨日は本当にすみませんでした。家まで運んでもらっちゃって、しかも豪の相手まで。お礼になんか出来る事ありますか?」
「いい。なんもいらねえよ。俺も謝ることがある」
「え?」
「お前のこと、噂とか見た目とかで決めつけてた。俺の母親、ろくでもない人で、女に偏見出来てて。快斗騙されてんじゃねえかって、心配で。今まで、態度悪くて悪かった。」
豪は、この人に何を言ったんだろう。
気に入ったって言ってたけど。
「豪になんか言われたんですか??」
「言われたっていうか、よくよく考えれば、お前のこと知らねえことばっかなのに、決めつけてたなって。お前が、雨がダメなこととか、全く知らなかったし。死んじまうんじゃねえかって」
なんだろう、こんな困った顔、初めて見た。