「今、迎えに行こうとしてたんだ。こうなるだろうと思って。そんな死にそうな顔するな。気を失ってるだけだから安心しろ」
落ち着いた声で、俺に言って聞かせるその人。
ジーンズに、グレーのニットに紺のロングコートを羽織っている。
スっと柊を俺の背中から持ち上げ、どこかの部屋に連れていった。
俺は呆然と立っていた。
「おい、お前も来い」
部屋の方からそう聞え、部屋に入るとそこは寝室でキングサイズのベッドに柊は寝せられていた。
ほら、と柊の手首を触らせられ、脈を感じた。
「生きてんだろ?こいつ、雨が降るとこうなるんだよ。」
「あ、め」
「ああ。驚いたろ。ここまで連れてきてくれてありがとうな」
「いや、」
「風呂入ってくか?お前も風邪ひくぞ」
「家、隣なんで」
「そーなのか?あ!あのバームクーヘンのか!」
「え、ああ。」
従兄と俺の温度差が違いすぎる。
本当にこれは、いつものことなのか。
雨が降る度、アイツはこんな辛い思いしてんのか。
「なんで、雨が降るとこうなるんですか」
「それは、本人に聞け。」
「……」
「お前、名前は?」
「五十嵐織人です」
「彼氏?」
「いや、違います。仲も良くないですし」
俺はずっと、柊から目が離せずに口だけが動く。
しきりに、前髪から雫が落ちる。