キミは僕とのマンツーマンの打ち合わせの中で、
何度もするどい指摘を遠慮の欠片もなく言い放ってきたんだ。

いや、口調は遠慮がちというかソフトな物言いなのだけど、言ってる内容は僕のプレゼンの甘さを的確に突き、
さらには僕の想像を超える提案さえも飛び出した。


なんで・・・

見た目と中身のギャップをこんなに感じる人に出会ったのははじめてだった。

頼りなくて、なにも考えずに、おとなしくディレクターのいいなりに動くだけの作業者かと思っていた。

いや事実、今まで僕が経験してきた案件で、
彼女のポジションだった人はみんなそうだったんだ。

キミは僕なんかよりもはるか高いところから、
この案件を見下ろし、着地点も明確に見えているようだった。

このときからすでに
僕はキミに、僕のペースを乱されていたんだ。

今思えば。


そう、こんなに自分以外の誰かが気になったのは初めてだった。

キミは僕の
嫉妬心、羞恥心、プライド、常識を全部かきみだした。