『私、へんな夢をみたんです。』

キミは掛け布団から目だけ出した状態のまま、
こっちを見ながら夢の話をし出した。

『ワニに食べられる夢。』

また突拍子もない夢だな。
と思いながら、
僕はまだキミと目を合わせるのが気まずくて
視線を外したまま黙ってキミの話を聞いていた。


『おっきいワニがたくさんいて、
こわくて逃げて逃げて、
でももう逃げ道がなくなって
もうダメー!って絶望してたら、
突然藤川くんが現れて、
「早瀬さん!大丈夫?!」って、
ばッ!って私の手を掴んで』

『え?』
びっくりしてとっさに僕はキミの方を向いてしまった。
でも、キミと目が合って、
気まずくて、またすぐ反らしてまた違う方を向いたんだけど。

『藤川くん ワニと闘いながら、
私の手を引いて一緒に逃げてくれたんですよ。』

僕は視線を反らしたまま、少しだけ呆れたように呟いた。
『なにそれ・・・』

でも少しだけ笑えてきて、いつのまにか
背中が熱いのはおさまってた。


『藤川くんに引っ張られて・・・
ワニから逃げて、
なんか物陰に座って隠れて、
でもいつまたワニに襲われるかわかんないからこわくて
どうしようって思ってたら、
藤川くんがね、
なんと
私のあたま、いいコいいコしてくれたんですよ。


『は?』

ケホケホッ
僕は思わずむせてしまった。

『ひゃー!言っててはずかしー!』
ってキミは掛け布団を頭の上までかぶって
顔を全部かくした。
そして布団のなかで足をバタつかせていた。

っていうか・・・
聞いてるこっちのほうが恥ずかしいんだけど!!


僕が見てたキミと、キミが話すキミの夢は
シンクロしてるの?


キミがうなされてたのは
その夢の中でワニに追い詰められてたから?


僕がキミの手を引いて逃げるってなったのは、
うなされてるキミをみて
僕がキミの手を握ったから?


それで僕はキミのあたまを撫でていたから・・・

全部夢とリンクしてる。


眠っているキミにしていたことが
キミの夢でバレてる。

マジか。

恥ずかしさで
また頬が熱くなった。