『・・・どうして?・・・』

僕をみつめたまま、か細くてかすれた声でキミは呟いた。

混乱・・・してんのかな・・・

『早瀬さん 倒れたんだよ』

キミはこの状況を一生懸命理解しようとしてるのか、
記憶を思い出そうとしてるのか、
何度かぱちぱちっとまばたきをして、

病室の窓から見える景色や、自分と繋がってる点滴、
天井やカーテンと次々と視線を移していった。

『病院だよ。救急車で運ばれたんだ。』

『え・・・?』

キミは、僕の言葉が信じられない、というような感じで目をキョロキョロさせていた。

『熱と脱水症状だって。

どこか痛むとことかある?

一応、倒れる寸前で受け止めたんだけど・・・』

キミは宙をぼんやりみつめたあと僕をみて、

『手・・・』

僕ははっとして、握っていたキミの手をパッと離した。

めちゃくちゃあせりながら、

『ごめん勝手に。痛かった? ごめん!』

僕はキミと目を合わせるのが気まずくて
視線を反らした。

でもキミはまっすぐ僕のほうを見て、

さっきと同じかすれた声で、
僕にきくんだ。

『ずっと手・・・握ってくれてたの?』

うッ・・・
ストレートにきくのやめてくれないかな・・・

一瞬だけキミの方をみた瞬間、
キミと視線が合って、
その次の瞬間、
僕はまたすぐに視線を反らした。


もう限界・・・・

僕はMAX恥ずかしくなった。

キミの手を握ったことを一瞬で後悔した。


なんか、顔まで熱くなってきたし。

きっと僕の顔は赤くなっていたんだろう。
それがまためちゃくちゃ恥ずかしくて。

恥ずかしさの連鎖が止まらなかった。


キミの問いかけになんて返事をしたらいいかもわからないほどパニクった。

そんな僕をみてキミは少し微笑んだ。

『ありがとう・・・ございます。』

僕はもう恥ずかしさでキミの方を向く勇気がなかった。