食事中も、なんだか眠たげな咲。


「大丈夫か?」

「なんだか、夢みたい。
けど、夢じゃないね……」


咲が、紅茶を飲み干した。


「寝たいな……」


誘惑?甘い誘惑しか、聞こえない君のーー

甘い甘い声。

ぎゅっ、と抱き締めたら加速する鼓動。


「ああ」


寝る仕度をして、向かった先は俺の部屋。

電気を消して、咲とベットになだれ込む。


俺は咲の頭を撫でた。





「ひどくして、ごめんな」



嫌がる咲にたくさん、ひどいことをした。

消えない過去ーーー。



「ううん、本当は嫌じゃなかった。

怖かったけど、嫌じゃなかったよ」


嫌じゃなかったーーー??


今、二人っきりにそんなこと、言われたらーー


「我慢出来なくなるから、今言うな。
抑えられなくなる……」


それだけは、避けたい。