つまり、『私の咲桜ちゃん』というのは娘的意味合いなのだろう。


お隣で、父と幼馴染なら――結構年は離れていそうだが――その縁で旧知だったとか。


そこへ流夜が現れて咲桜を掻っ攫って、朝間先生からは疎まれている。


……大変そうだなあ。


朝間先生も、咲桜の父親がすきって……それで年頃を迎えても浮いた話の一つもないのか。そこは納得だ。


「……大変そうですね」


「全くだ」


「貴方に言えた口ですか。神宮さんさえ去ればいい話なんですよ?」


「去るわけないでしょうが」
 

……。


険悪だ。


「あれ? 笑満、いるんじゃないんですか?」
 

保健室を見回すけど、人がいる気配はない。


確か朝間先生は、「松生さんが待っています」と言っていたのだけど。


「いませんよ。神宮先生に合コンだの行かれて、咲桜ちゃんが悲しむのも嫌なんで助け舟出したつもりなんですよ?」


「……………それは、業腹ですが、助かりました」


『業腹ですが』を強調して言った。『助かりました』は小さかった。