誰にも話せないこと、ではなかった。


笑満にも夜々さんにも話している。


在義父さんにも。
 

気恥ずかしいのと、申し訳ないの。不安に苛まれていたけど、傍らに夜々さんがいてくれたから、高校に入る前に、在義父さんにも相談していた。


在義父さんは、私の嗚咽まじりの話と、夜々さんの説明を聞いて、


「そう。……今まで、言えなくてごめんな?」
 

そういうことを話せる環境を作らなかったことを、むしろ詫びられた。


そうして、


「私は咲桜が娘だという、それだけで十分だ。だから、咲桜は自分の心と話していい。私や夜々ちゃんや、箏子先生のことは気にしなくていい。笑満ちゃんに話すことは、咲桜がどうするか決めることだ。話すも、話さないも。……咲桜は、自分の心と身体を一番に考えて、大事にしてあげなさい」
 

……そう、頭を撫でられた。
 

どれほどの人を父に持ったのだろう。


もう嗚咽では済まなくて、泣きながら何度も肯いた。


ありがとうと繰り返した。


一番に私を傷つけない道を示してくれるのは、いつも在義父さんだった。