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夜になる前、華取の家を訪れた。


あの日から、まる二日経った夕刻だ。


在義さんはわかっていたように落ち着いた様子で出迎えてくれた。


「……来たね」


「遅くなりました。在義さん、お願いがあります。一日、咲桜をください」


「………」

 
黙る在義さんに、俺は少しだけ微笑んだ。


……力は弱い笑みだったかもしれない。


「ちゃんと、在義さんの許へお返しします。咲桜がいないと在義さんの生活能力はないそうですから」
 

茶化すような言葉にも、在義さんは真面目な顔で肯いた。


「……わかった。咲桜を呼んでくる」
 

――最後だ。
 

松生と朝間先生に半ば抱えられるようにして降りて来た咲桜は、俺を見るなりぎゅっと顔を歪ませた。


逃げ出したい、表情は言う。


俺は先手を打った。


「咲桜、おいで」
 

いつかのように、いつものように、手を差し出した。


いつだって咲桜はその手を取ってくれた。