クリスマス。


「なぁ、彼女と出かけてぇんだけどさ、デートって、行くとしたらお前はどこに行きてぇ?」



長年片思いをしている幼なじみに、相談があると言われ放課後に残れば、悪気なく問いかけられた言葉。

それは私の心を残忍に抉るのには十分だった。

別に、期待なんてしていない。していないけど、少しだけ思ってしまうでは無いか。


窓から見える景色は、もうすぐで空が1面オレンジ色に染まるのだろう、直前という感じだ。

もう、冬だ。暮れるのも早くなる。


『自分で考えなさいよ。ほかの女と彼氏がたてたデートなんか行きたくない。』


「んー?いや、ま、そうかもしんねぇけど、絶てぇー、成功させてぇんだよ。」


『私とは好みが違うでしょ、』


「いや、似てるから頼んでんだって。」


私の前の席に座って、体だけを私の方に向ける。


……何が楽しくて好きな人と彼女のデートなんて考えないといけないのよ。


もしも、全ては実は私のため、とかだったら泣いて喜んだだろう。



『行くとしたら、映画とかじゃないの?上映の時は喋らなくてもいいし終わったら盛り上がれるでしょ。……あんたが寝なければの話だけどね。』



だけど、違うことなんて知ってる。

あの子にしか見せない、無邪気に笑って、八重歯を見せて、目尻をクシャッとさせて笑うんだ。

楽しそうに。嬉しそうに。


「そっか!ありがとな!!行ってくる!!!」







ほんと、


『馬鹿なんじゃないの?』



1人残された部屋でぽつりと呟いた。



彼女はもう、居ないというのに。ずっと、亡きものの影に縋って。

きっと、今頃彼女の墓石に話しかけているのだろう。



「なあ、映画、行かねぇか?デート、してぇんだけど。

いつでもいいから。いつまででも待ってるから。

来世でも、再来世でも、いくらでも。


…………なぁ、だから、その時は…また、2人で出かけよう?」


こんな風に言っているのだろう。


『ほんと、馬鹿。』


彼女は去年の七夕に、事故であんたをかばって死んだでしょ、流風。


『そろそろ、私も見てよ……』


本当は、あらぬ期待ばかりして、流風から離れることができない自分が一番馬鹿なのだと悟っていた。