「……っ」
手に持ったパスポートを、ポケットに滑り込ませる。
──これがなければ彼は帰らない。
なら、私は。
「──神様ごめんなさい」
私は、悪い子です。
罪悪感を抱きながらも私は、リアくんが歩いて行った方向とは反対に歩き出した。
ポケットに入ったパスポートはそのままに。
服の上から、ぎゅっとそれを握りしめる。
帰って欲しくない。そばにいたい。
もう少しだけ、このままでいたい。
彼女になりたいなんて、そんな図々しいことは望まないから、だから。
あのなめらかな白い肌を。
柔らかい金色の髪を。
きらめく青い瞳を。
もう少しだけ、眺めていたい。
あと、少しだけ。
──だって私、リアくんのことが。
「……好き…」