最低すぎる自分に絶望していると、なめらかな白い指が私の頬に触れた。
ぼやけた視界に写るのは、困ったように笑うリアくん。
「ねえ、泣かないで?」
ただただ甘いその声が、私の耳を溶かしていく。
くい、と優しく私の涙をぬぐった彼は、静かに目を伏せた。
リアくんの長いまつげが震え、水滴が床に落ちる。
顔を上げた彼はもう、柔らかく笑っていた。
「ボク、帰りたかったよ」
リアくんの口からこぼれるのは、当たり前の言葉。
うん、ごめんね、と呟くと、彼は静かに首を振った。
「帰りたかったはずなのに、帰れなくなったとき、何でかほっとした」
その理由が今やっとわかったよ。
そう言ったリアくんが、いたずらに微笑む。
「キミがいたからだ、アヤネ」
ボクもキミが、好きみたい。
さらりと何でもないことのように言われ、心が追いつかない代わりに涙があふれる。
泣かないで、Happy endにしようよ、と言って彼は、優しく笑った。
そのままリアくんの顔がふわりと近づいて、頬にキスを落とされる。
あまりに展開が早すぎて固まっていると、唇をふに、と触られた。
「次はアヤネがボクに会いに来る番。そしたら今度は、口にしよう」
そんな恥ずかしいことをさらりと言った彼は、甘く微笑んだままで。
顔に熱が集まっているのを感じながら、小さくうなずく。
──大学1年生の夏。
アメリカ留学をするために、大好きな人との約束を守るために、この大学で勉強することを私は決意した。