「…っ」
「天の羽衣」の、悲しいエンドが頭をよぎった。
嘘をついていた男が、最後に天女を失ってしまうバッドエンド。
今のこの状況と重なって、涙がこぼれる。
「リア、くん」
終わらせたくない。
初めて会った日彼は、「天の羽衣」のエンドを聞いて、そんな別れ方は嫌だと言っていた。
なのに、私は。
大好きな彼に嘘をついて、悲しい顔させて。
「…っ私、リアくんが好きなの…!」
そんなエンドは、嫌だ。
そう思ったときには、声に出ていた。
涙で視界がぼやけて、リアくんの表情は見えない。
彼のえ?という声が聞こえた気がしたけれど、私の嗚咽にかき消されてはっきりとはわからなかった。
「好きだから、一緒にいたかった。帰って欲しくなくて、パスポートを盗んだの。…っごめんなさい…!」
もうどうとでもなれという気持ちが、ずっと言えなかった気持ちをつらつらと並べていく。
──こんな私の気持ちを知ったら、優しいリアくんはきっと私を嫌いになれない。
嫌いにならないでほしい。
欲を言えば好きになってほしいけど、それは無理だろうから、せめて。
私を、嫌いにならないで。