「…っ!これ、は」


破裂しそうなほどに心臓がばくばく鳴り始める。

乾いた喉からは何も声が出なくて、沈黙が訪れた。

なんでこれが、とリアくんが震える声で呟く。


「……アヤネが、ずっと持ってたの」


これ、ボクのパスポートだよね。

中を開いたリアくんが、私を見た。


「なんで、嘘ついたの。ボクが帰れなくて困ってるの見て、楽しかった?」


彼の青い瞳が、揺れる。

潤んだその瞳から、はらりと透明な雫がこぼれた。


「ちが、そんなんじゃ、」


謝らなきゃなのに、私の口からこぼれるのは言い訳だけ。



酷いよアヤネ。


そう言ったリアくんが、悲しそうに目を伏せる。

胸がぎゅ、と締め付けられて、でも声を出せなくて、私はそっと震える息を吐き出した。


「……明日、帰るよ。今日までありがと」


おやすみ、と素っ気なく告げられる。

その4文字に拒絶の意思を感じて、じわりと視界がにじんだ。