「甘い香りがしたんだ」


香り?


疑問に思いつつも、黙って利仁くんの言葉に耳を傾ける。



「椿ちゃんだよね?俺にカップケーキくれたの」


「あっ」




そう、それは入学したばかりの頃のこと。


今と変わらず、利仁くんがサッカーの練習してるところを覗いてたの。



そしたら。


『お腹空いたなぁ。甘い物が食べたい』


そう言った利仁くんが見えて、よし、と思った。


私が利仁くんにケーキを作ってあげようって。



次の日、さっそくカップケーキを作って、サッカー部の練習が終わる直前に靴箱に入れたんだ。