それは……屋上から出てすぐの廊下で、私をぎゅっと抱きしめたときのこと?

たしかに……あのときのことは、洋くんには話してない。



でもそれは、光琉くんの様子がいつもと違ったからであって。

泣いていたからであって。



そこに下心なんてないと思ったし、わざわざケンカの種を作りたくなかったから。

だから洋くんには言わなかったんだ。



洋くんはちらっと私を見ると、またすぐに光琉くんを睨みつけた。



「こんのクソ野郎っ!」



1度は止めた拳をまた振り上げると、光琉くんの腹部に重たいパンチをいれた。