そう言って私のトンッと背中を押す。

「うっわあっっ!!」


完全に気の抜けていた私は思いっきり転ける……と思われたが、

「止まれ」


その声が聞こえた瞬間、私の体は仄かに赤く光って止まった。

……体が宙に浮く、というのは人生初だ。

「大丈夫ー?」

ふわふわした声の先を見てみると、これまた声と同様にふわふわした雰囲気の美少女がこちらへ来る。

「怪我は無い?」

「……ああ、問題ない、ありがとう。ええと…」

「ああ!私は緋桐舞(ヒキリ マイ)。よろしくね!ええと…」

「……私は黒宮信乃だ。あの、助けてもらったところ申し訳ないが、この術を解いてもらえるとありがたい。」

さすがに変な体勢のまま宙に浮いているのは恥ずかしい。

「あっ!ごめんね!私ったらつい……。動け。」

ゆっくりと体が動き始める。

私は体勢を正しながら着地をする。

「改めて、転けそうなところをありがとう。お陰で入学早々転けなくて済んだ。」

「どういたしまして!」

緋桐さん、と言ったか。

何だか女の子らしくて可愛い子だ。

ボブカットの髪は茶色く、ふわふわとしており、とても小柄で華奢だ。

身長が170㎝近くあり、重たい黒髪の私とは大違いだ。