瑠璃は、昼間会った無礼な王子について考えていた。

確か、石彫りにばかり熱中する変わった王子だと聞いている。
あの作業着もきっと自前のものなのだろう。


意思の強そうな瞳をしていた。


自分を理想の女だ、と言った。
興味がある、と。


困る、と瑠璃は思った。


興味など持たれては困る。
自分は現世の人間とはできるだけ関わりを持ちたくないのだ。
関わりを持っても、意味が無い。
自分がそれを持つことは許されることではない。

どんな人間同士の関わりも、愛情も執着も、それを容赦なく切り捨ててしまうのが自分の役目であるのだから。

恨みなどの感情を向けられることは今まであっても、あんな好奇心を向けられたことはなかった。

やはり、変わった王子なのだろう。



そもそもあの王子には婚約者がいたはずだ、と思い出した。
それが婚約者を差し置いて自分を理想の女だと言う。

なんと軽薄なことだろう。

自らに向けられた多くの愛情に、気付いていないとでも言うのか。



瑠璃はそう感情に波のあるほうでは無い。

だが、今日は無性に腹が立った。

そして、変な王子に腹が立った、その事実にまた腹を立てていることに気付いた。


深呼吸をする。
自分には関わりのないことだ、と言い聞かせる。
あの王子のことを考えているだけ無駄だ。
自分は誰に対しても興味を抱かない。







興味を持ったところで、意味がないのだから。