「いったぁーい。」

私が言うと、悠貴さんが、

「田中、暁里を虐めると、富田さんを
異動させるぞ。」

と言った。

「え!? なんで?」

田中君より、私が先に聞いた。

「田中を異動させたら、うちの売上が
おちるだろう?
その点、富田さんなら、売上に影響はない
上に、田中に効果的に抑止力を発揮して
くれる。
これ以上ない切り札だと思わないか?」

悠貴さんは、にやりと笑った。

「最低な上司だな。」

田中君が悪態を吐くと、

「何とでも。
俺は暁里とこの会社を守る義務があるんだ。
そのためなら、なんでもするさ。」

と悠貴さんは、事も無げに言った。

「ダメ!
私の百合ちゃんを異動させたら、悠貴さんを
恨むからね。」

私が言うと、

「くくっ
部長のアキレス腱がなんか言ってますよ?」

と田中君が笑った。