悠貴さんが言うと、田中君は苦虫を噛み潰したように顔を歪めた。

「ははっ
掻っ攫った本人がよく言いますね。」

主任が言った。

「そりゃ、恋愛なんて、手に入れたもん勝ち
だからな。
ほんのちょっと、タイミングがずれるだけで、
あっという間に大切なものをなくす事もある
だろ。
俺は、田中が行動を起こす前に暁里に
出会えて、ラッキーだったんだよ。
移動初日に暁里が田中と2人で仲良く
帰ってくのを見て、付き合ってるんだと思って、
がっかりしたんだからな。」

「え!?」
「は!?」

私と田中君は、驚いて声を上げた。

「がっかりして諦めたのに、その数時間後に
ヘベレケになった暁里を抱える田中に
会ったら、ただの同期だって言うから、
内心、どれだけ喜んだ事か。」

「ちょ、ちょっと待って、悠貴さん。
それだと、移動初日から私の事が好きだった
みたいに聞こえるけど?」

私が言うと、

「好きって言うか、面談の時から気に
なってたよ?」

と悠貴さんは、さらっと言った。