悠貴さんも今度はもう、先へは促さない。

だけど、悠貴さんが見てるのは、ペンギンじゃなくて、私だった。

「なんで?」

私が聞くと、

「決まってるじゃん。
今、ここにいる生き物の中で、1番かわいい
ものを眺めてるんだよ。」

そう言って、悠貴さんは笑った。

「もしかして、ペンギンに飽きた?」

「んー、暁里に飽きないから、ずっといて
いいよ。
この先は、もうないから、慌てる必要も
ないし。」

私は、もう少しだけペンギンを眺めて、その場を後にした。

売店でお土産を買う。

イルカやペンギンをモチーフにした指輪が並んでいた。

「かわいい〜」

手に取って、次々にはめてみる。

「暁里は指輪のサイズいくつなの?」

悠貴さんに聞かれて、

「9号だよ。
でも、これはお土産用にフリーサイズに
なってるから、心配しなくても大丈夫。」

と答えた。

でも結局、見ただけで、指輪は買わなかった。

代わりに、悠貴さんは、お揃いのマグカップを買ってくれた。

「あ、悠貴さんと同じお土産を会社には持って
いけないね。」

お菓子を見ながら、私が言うと、

「暁里が好きなのを買えばいい。
俺は無難にういろうとか海老煎餅とか
その辺で買ってくから。」

と言ってくれた。