いじわるだね、佐伯くん。

「柑那次移動だよ!急げー!」

「先行っててー!」

「分かったー!」


突然ですが、今私高石柑那(タカイシカンナ)大ピンチです。

「大好きな、大好きな舞宙(マヒロ)。ホントごめん!」

「柑那は舞宙のことが好きなの?」

「そうだよ…!なのに、なのに!」

キーンコーンカーンコーン……

鳴っちゃった……!

「佐伯くんのせいで授業遅れちゃうじゃん!」

「いいじゃん。別に。」

「よくないから言ってるの!」

「ねぇねぇそれでさー」

「あの、話聞いてますか?佐伯くん」

「聞いてる、聞いてる。それでさー」

いや、聞いてないでしょ

今私がどんな風になっているかというと

今私は佐伯くんの上に座っているの……

で、佐伯くんは後ろから抱きしめる形。

たまに何故か佐伯くんが手招きをして気づいたらいつもこのありさま。

前までだったらなんとか授業に間に合ってたのに…。

いや、今日も必死に抵抗しようとしたよ?!

だけど

「逃げたら口塞ぐよー」

と軽く言われてしょうがなくこうしてるの。

高校1年生になってもまだ付き合ったことのない、

年齢イコール彼氏いない歴16歳のわたしが

こんなやつにファーストキスなんか奪われたくないし。

でも、今はよりにも寄って大嫌いな化学。

せめて授業だけは受けたいのに…!

「ねぇ、ねぇそろそろ授業行きたいんだけど?」

「だーめ。今充電中だから。」

充電中……?

「他の女子にやってもらえばいいじゃん」

佐伯くんが急に強く抱きしめた。

「柑那じゃなきゃだーめ。」

ドキッ

佐伯くんはいつもこういう甘い言葉を言う。

佐伯くんはドキドキさせる天才だ。

好きじゃないんだけどね。

第一好きになったとしても佐伯くんは他の人を選ぶもん。

「かーんーなー?」

ビクッ

耳元で囁かれるのは反則。

「なに?」

「いいところ連れてってあげる」

いいところ……?

待って。今授業中じゃん。

「……知らない」

……え。今佐伯くん知らないって言ったよね?!

堂々とサボるのも程があるよ、、、

成績が悪くなっても佐伯くんのせいなんだからね?

単位取れなくなったらどうしよ

「行こ」

手を取って歩き出す佐伯くん。

「こんなんじゃ付き合ってるみたいじゃん」

「そんなわけないじゃん」

「…………」

分かっていた返事だけどなんか悲しいかも

「でも期待はしてていいかもね」

「……?どういうこと?」

「自分で考えなきゃ意味無いでしょ。もう充分ヒントあげたし」

いやいやあげてないでしょうが!

なにをどうしてどこでヒントもらったのさ!

そうこうしているうちに佐伯くんは急に止まった

そこの教室を開けると、さっきまでムカついてたことが一気に忘れ去られた

おおおおおお

ここは卒業するまでに行きたい教室No.1の所だった

でも雰囲気が怖くて七不思議に入っているとか

情報に疎い私でも知ってるぐらいだ

「ここがいい所……?」

「そ。よくサボりに来てるところ」

なんか凄いこと聞いちゃった気がするのは気のせいだよね。

「ここ教えたの柑那が初めて」

「なんか嬉しいかも……」

特別みたいで不思議な気分

「今日はやけに素直ですね、柑那さん」

「それはありがとうございます、佐伯さん」

「んで、なんでここに連れてきたの?」

「んーなんとなく?」
「なによーなんとなくって」

「秘密ー」

教えてくれたっていいじゃん…

「拗ねててかわいー」

そんな事言ってもホントは思ってないくせに

「ほら早く入ろ!」

「俺が連れてきたんだけどー?」

そんな言ってることは無視して……

ここの教室別世界みたい

学校じゃないんじゃないの?って疑ってしまうくらい家みたいなの

「す、すごい……教室が改造されてる」

「そ。ある時来たらこうなってて先生に聞いたらくれた」

先生軽いな。

「いいなー佐伯くんだけ。私も分かってたら独占してたのに……」

「でも、教えてあげてるじゃん」

「上から目線でなんかムカつく…!」