「アニキ、アニキ。どこにいるんだよ。」

俺は、広い校舎の中を探し回ったが、アニキの姿はない。

アニキこと立石蔵之介。

眉目秀麗、文武両道の優等生。

だけど、そのくせ、ちょっと浮世離れしたところがあり、世間知らずなアニキは、ほっとけない存在だった。

「アニキーッ。」

俺は、窓から外を見る。

すると、なぜか、そのアニキが、あの倉持と連れだって、歩いているのを目にした。

えっ?

何で、アニキと倉持が、一緒にいるんだ?

二人して、人気のない校舎裏へ消えて行った。

倉持のヤツ、アニキを連れ出して、一体、どうする気だよ。

まさか……?

俺の度重なる言動に腹が立って、アニキに文句か?

いや、それにしては、おかしい。

文句を言うなら、俺にだろう。

何の関係もないアニキに、何かしやがったら、倉持のヤツ、殺してやる。

俺は、二人が向かって行った方へ駆け出した。