「チクショウ。倉持のヤロウ。今度こそは、絶対勝つ。」

誓いも新たに、俺は、帰り支度を始めた。

「何で、龍之介は、そんなに倉持のことが嫌いなんだ?」

「むっ……。」

「そうだよな。倉持ってさ、顔はイイ、頭良いし、スポーツもできる。友達受けもいいんだぞ。」

俺の友達である、喜多村英樹と加賀谷亮太は、さも不思議そうに、そんな風に言い合う。

「…とにかく。俺は、倉持のことが、ムカつくんだよ。あんなヤツ、大嫌いだ。」

「ふうん。」

「まぁ、いいや。龍之介、英樹。帰ろうぜ。」

亮太が、そう言ったので、

「じゃあ、アニキも一緒にいいか?」

俺は、アニキの顔を思い浮かべて、満面の笑みをする。

「龍之介、お前……。」

「んっ?どうした?亮太?」

「そのブラコンを直さないと、彼女できないぞ。」

「俺は、ブラコンじゃないよ。ただアニキが大好きなだけだよ。」

「そういうのをブラコンっていうんだよ。ハァー、まぁ、龍之介の気持ちは分からないでもないけど……。」

「もういいじゃないか。そこが龍の良いところなんだからさ。」

「英樹は、龍之介に甘いんだよ。」

「そうかぁ?」

「そうだよ。まぁ、いいか。立石先輩を迎えに行くか。」

「うん。行こう、行こう。英樹、亮太。」

俺は、嬉々として、アニキがいる教室へ向かったのだった。

その後、待ち受ける悪夢、いや、現実には気づきもせずに……。