ふと佐藤くんと目が合う。ドキ!と心臓が跳ねて、ぎゅっと手を握る。怖いと、思ってしまった。
誰かに好きって、言われたのも初めてなのに。これまでは、好きな人じゃなくても誰かに想われたら嬉しい感情が湧いてくるのだと勝手に決めつけていた。
違う、んだ……。
「ごめん、小田さん……」
「チッ。もういい。お前はぜってぇ金輪際こいつに関わんな。いいな」
掴んでいた胸ぐらを大志くんが投げるように離す。そして広げていたノートや教科書をかばんにしまうと、「行くぞ」とさっさと歩いて行く。
私も慌てて片付けるとかばんを肩にかけて大志くんの後を追った。
佐藤くんの横を通り過ぎるとき、彼のことは見れなかった。胸が、痛んだ。
「待ってよ……っ、大志くん……っ」
走って追いつくと大志くんが急に立ち止まるので、背中にぶつかりそうになる。
振り返った大志くんは私の手を取って再び歩きだした。引っ張られるようにそのまま進む。握られている手のチカラがあまりに強いので驚いてしまった。
私の手が熱いのか、大志くんの手が熱いのか、もうよくわからない。頭がうまく働かないのだ。
だけどすこく──熱い。胸も、顔も、手も。
静かな廊下には私たちふたりぶんの足音だけが響いている。だけど太鼓を叩くような大きな自分の心臓の音が一番耳を支配している。
頭のなかが沸騰したようにぐるぐると空回りして、なにも考えられない。
これって……これって……なに?
私はいま、どんな感情のなかにいるの?
わからない。経験したことのないような熱にいま侵されている。



