「もー、大丈夫だってば」


だから泣き真似をやめなさい、とため息混じりに言えば。


「優羽」


今の今まで顔を伏せていた真琴が、いきなり顔を上げるなり、ギラギラとした目で私を見つめてきた。


「ま、真琴?」


真琴は私の手を取ると、私の耳元へと口を寄せ、囁くような声でこう言った。


「さては西園寺が関係しているな…?」


「…え?」


真琴は「なるほどな」と一人で勝手に納得しながら、黄色い声が飛び交う廊下へと視線を投げる。


「何だかんだで真面目な優羽が授業をサボるなんて有り得ぬからな。十中八九、西園寺が関係しているに違いない」


「あの、真琴――」


「大丈夫、任せておけ。何と言っても、私は優羽の唯一無二の友だからな。五限をサボって西園寺といかがわしいことをしていたことは墓場まで持って行く。安心してくれ」


「違うわ!」


西園寺とサボっていたことは当たっているが、それ以外は何だ。

唯一無二の友なんて、まるで真琴以外に友達がいないみたいじゃないか。

まぁ、その通りなんだけど。