西園寺は手早くゴミを片付けると、颯爽と出口へ歩き出した。だが立ち止まったままでいる私を不思議に思ったのか、足を止めて後ろを振り返る。


「…並木さん? 六限始まっちゃうよ」


「ごめんなさい、ボーっとしてた。今行くね」


でもまぁいいか。学園王子と授業をサボってご飯を食べるという、激レアなことが出来たし。

コイツの親衛隊やファンの連中よりも親しくなったと思うし。


(…連絡先、訊くべきだったかな。それはがっつき過ぎかな?)


美味しい時間を過ごせたことは何よりだが、この先こういう事が起きてくれるとは限らないだろう。

西園寺とはクラスが違うし、接点は無いに等しいし。

さて、どうするべきか。


「並木さん」


「は、はいっ」


俯いている私へと、柔らかな声が降る。

慌てて返事をして出口へと駆け寄れば――。


「…連絡先、訊いてもいい?」


西園寺はスマホを片手に、王子様スマイルを浮かべていた。