寄せては返す波のように吹く風が、私の髪を宙に攫う。同じように、西園寺の色素の薄い髪も舞い上げていた。
風からほんのりと花の匂いがする。
あたたかくて、気持ちがいい。
この場所に居るのが私一人だったら、ごろんと寝転がって日向ぼっこをするんだけどな。
今は西園寺も居るから…って、よく考えてみたら、西園寺と二人きりじゃないか。
もしかしなくても、これってチャンスなんじゃ…?
私は西園寺の隣にそっと腰を下ろし、おずおずとヤツの顔を見上げた。
スッと通った鼻筋に、アーモンド型の綺麗な瞳、女の子のように長い睫毛。容姿だけで九割の女のハートを射止めてそうだ。
…それはそれとして、訊き出してしまおう。
「…あの、西園寺くん。さっきのことなんだけど、訊いてもいい?」
「さっきのこと?」
「うん。その、空き教室から高橋さんが出てきた時の…」
私は上目遣いをしながら問いかけた。
西園寺は何度か瞬きをした後、ああ、と思い出したような声を上げると、私に視線を戻す。