私はごまかすように咳払いをした。
そんな私を見て、西園寺はまた笑う。
コイツ、本当にこれが素なのかな。
実は二重人格で、優しい王子様の仮面をかぶっている魔王じゃないのかな。
私を屋上に連れてきたのは、本性を見せるため…なんて、少女漫画みたいな展開になることはないか。
「今、俺のこと見てたでしょ?」
ああ、またやってしまった。
西園寺を観察しながら考え事をしていたから、また目が合ってしまった。
「み、み、見て…なくもないこともない…です」
私は顔の前で手をぶんぶんと振りながら否定をし、可愛く笑ってみた。
さぁ、動じてみせよ。ドキドキしてくれ。
西園寺は柔らかに目を細めると、どこぞの王子様のような仕草をするなり笑った。
「ははっ、どっちなんだか」
ちくしょう、顔を赤らめやしないなんて。
私の些細な願望は、優しい笑顔に吹っ飛ばされてしまった。