『言った、けど…』


その時の私は中々状況が呑み込めなくて、サンドイッチを頬張るアイツをただ眺めていたっけ。

そうこうしているうちに、私のお腹が空腹を訴えるように鳴り出して、西園寺に笑われて…。

そしてメロンパンを食した後、アイツは不気味な色の飴をポケットから取り出すなり、私に食べるよう強要してきたのだ。

――妖しいセリフを吐き出しながら。


「…わたし酸っぱいの嫌いなの」


「どうして?美味しいのに」


「…トラウマ、かな。小さい頃、嫌と言うほど梅干を食べさせられて…」


しょんぼりを装って告げれば、西園寺は困ったように眉尻を下げて「そっか」と言った。

その横顔がどこぞのモデルよりも綺麗だなぁと思ったのは内緒だ。だって私の方が綺麗だから。

なんて思いながら見つめていたら、思い切り目が合ってしまった。


「…並木さん?」


「う、うん…!なにかな!?」


ああ、びっくりしすぎて声が裏返ってしまった。

どんな声も鳥のさえずりのように美しいんだろうけどね。