私は妾の子だけれど、浮気相手の子供だけれど、葛城家の娘でもあるのだ。
家のために利用される未来もあるだろうとは思っていた。


「…そう、ですか」


「怒らないのか?」


父は悲しそうに言った。どうしてそんな顔をしているのか、私には理解できない。縁談を決めたのは、社長である父だろうに。


「怒る理由がありません。…お父様には、よくしていただきましたから」


父はほっとしたように笑った。向かい側に座っている美知子さんは、心底嬉しそうな顔をしていた。

話はこれで終わりだろうか。感情をさらけ出してしまう前に帰りたい私は、ソファから立ち上がった。

その時、父は何かを思い出したような声を上げると、部屋の外で待機している伊尾の名を呼んだ。


「お呼びでしょうか、旦那様」


伊尾はいつも通りだった。てっきり縁談話を聞かれていたのだと思っていた私は、なんだか安心したのだけれど。

そんな私の心は、数秒後にめちゃくちゃにされることになる。


「伊尾、お前は今週で雅の専属を辞め、来週から私付きに戻れ。後任は決めてある」


「…はい、かしこまりました」