簡単に男の手は離れて、ぐんぐんと
キラキラの建物から離れる。


景色がスイスイ流れて
いつの間にか公園のベンチに座らされていた。


目の前に奏がしゃがみ、あたしを見上げる。

「結月?
 もう来ないって何?」

「そのまんま…。
 それより、カオリさんは?いいの?」


カオリさん、かわいそうだよ…?

あたしのせいでほったらかし何じゃない?

「カオリって、結月に母さんの名前言ったっけ?」


ここまで来てもとぼけるの?

頭の中で何かが弾けた。


「もう、もういいよっ!
 ちゃんと分かってる!!」

「結月?」

「本命はカオリさんでしょ!?
 知ってるから。嘘吐かなくていいからっ!」


「…なんか勘違いしてない?
 カオリってのは本当に母さんなんだけど?」


勘違い……?

そんなはずっ!


って、あたしは何を求めてるんだろ…?

勘違いだって言われたら疑ってしまう。

カオリさんが本命って言われたら、
言われてしまったら?


ヤダ、ヤダヤダッ。

分かってるつもりなのに分かってなかった。


―――怖い…。