キラキラ光る建物。
そこへ入りそうになった時、

「結月っ!!」


どこかで、大好きな声が聞こえた。

って、気のせいか……。


だって、カオリさんよりあたしの心配、

とかありえないじゃん。


その時、
指からスルリとケータイが落ちた。


「おいっ!!」


また…?

また、あの人の声が聞こえた。


ケータイを持っていた手は
温かいものに包まれている。


―――え…?

ゆっくり振り返ると、

「…かな、で?」


なんで?

奏の視線はあたしの手を引く男へ向けられている。


「アンタ、だれ?」

「結月の彼氏。」

「へぇ~。アンタがこのコ泣かせたんだー。」


「…ッ。そうらしいね。
 とりあえず、返せ。」


そう言うと奏はグイッと、あたしの腕を引っ張った。