流夜くんの瞳が少し怯えていた。……少しくらい牽制しておかないと。


「今日、一緒にいてくれてありがとうございます」


「……うん」
 

今日一緒にいられて、明日も朝までここにいられる。


「がんばってよかったあ……」
 

こぼれんばかりの笑顔が抑えられない。


父さんに土下座した甲斐があったというものだ。
 

笑満にケーキ作りも教わって、龍生さんにも色々教授してもらって。


本当に自分の幸せは、一人ではいだけない。


桃子母さんが、在義父さんと出逢ってくれてよかった。


母さんが、桃子という人で――


「……咲桜」
 

流夜くんの指が、そっと私の頬を撫でた。


「あっ、ごめん。その……」
 

泣くほど嬉しかった。自分の命が、あることを。自分の命を―――


「咲桜。……ありがとう」
 

腕が背中に廻って抱きしめられた。