「子どもの頃、町の夏祭りに夜々さんと一緒に行ったんだ。そのとき、もうお酒入ってるおじさんたちが神楽やってて、私思いっきり頭噛まれたの」


「ああ、子どもに噛み付くと丈夫になるとか言うよな。それが嫌な思い出なのか?」


「ううん。その後。私びっくりしちゃってびーびー泣いちゃって、夜々さんが抱っこしてくれたんだけどね、……何がどうしてそうなったのか、酔っ払いおじさんが、別の酔っぱらったおじさんに抱き付いてちゅーしてたの」


「…………」
 


………え? 流夜くんが首を傾げる。


「ええ、と?」
 

流夜くん、困ってしまった。


「人生で初めて見るラブシーンが酔っ払いたちの戯言でショックでした。なんかもっと綺麗な感じのがよかった」


「………」
 

取りあえず子ども心に傷を負った出来事だった。