「ちなっちゃん、おはよう」

「おはよう…」

教室に着いて自分の席に座る。

ハルと、席が遠くてよかった。

長谷川くんとは隣だけど。

〝ガラガラッ〟

少ししてからハルが来た。

いつも私たちは一緒に来るからみんな驚いている。

ハル、ごめん。

「おはよう、高野。」

ーでた。私が1番会いたくなかった人。

「…おはよう…」

「どうした、山浦とケンカでもしたのか?」

「な、なんで?」

「お前ら、いつも一緒に登校すんじゃん。」

「別に、何でもないよ」

「ふーん。ま、ケンカしたなら謝った方がいいぞ、山浦、泣きそうな顔してるから。」

やばい。

また、泣けてきた。

長谷川くんはハルのことしか見えてないんだっ。

「…ごめん、保健室行ってくる。」

「あ、大丈夫?」

「うん、ありがとう。」

ホームルームが始まってないけど。

先生来てないけど保健室に行くと嘘をついた。

…なんか、今日、逃げてばっかりだな…




来た先はあの、中庭。

ここは誰もいないから好きなだけ泣くことが出来る。

岩には苔が生えていて雨が降るととっても幻想的。

カエルもいて、梅雨の時期にはカエルの唄が聞こえてくるから入学してからお気に入りの場所。

何かある度、ここに来てる。

「うぅぅっ………!」

泣きたくなんかなかった。

泣く資格なんてない。

ハルに八つ当たりして。

長谷川くんからも逃げて。

ホームルームをサボった。

なに。やってるんだろ。

「…また、泣いてるの。」

…へ?

どこから声がして、キョロキョロと辺りを見回す。

「前も、泣いてたね。」

…もしかして生物室…から?

生物室を覗こうとしたけど窓が閉まっていた。

窓は薄い磨りガラス状になってるから顔が見えない。

うっすらと、影があるのが見える。

生物室にいる人の顔を見るのは…無理そうだな。

「…私のこと、知ってるの?」

「うん、知ってる。前も、ここで泣いてた。」

見られてたの、恥ずかしい…!

「よかったら聞くよ。」

「なにが?」

「話。話した方がスッキリするかもしれないし。」

話して、みようかな。

私にはこんな経験をしたことがない。

1人で抱えるのは。もう、耐えられないと思った。

全然知らない人だけど。この人に縋りたいと、思った。