あれからどうやって帰ったのか記憶にない。

歩いて帰ったのはそうだと思うんだけど、その途中に誰と会ったのか、どの道を通ったのか。

休みの2日間散々泣いたから目が腫れてる。

それでも時間は平等に過ぎて、月曜日になっていた。

「千夏、そろそろ起きな」

お母さんの声でムクリと起きる。

起きたくない。

起きたら学校に行かなくてはいけない。

…仮病でも使おうか…

「仮病なんてダメよ」

「え?」

「声に出てた」

マジですか、それはダメだわ。

仕方なく重い足を引きずって準備をする。

行きたく、ないな。

朝ごはんはご飯が喉を通らなくて食べるのをやめた。

「行ってきます…」

いつもは学校楽しみなのに。

こんなに行きたくないのは初めてだ。

正直ハルにも会いたくなかった。

ハルは悪くないんだけど。

「おはよう、千夏!」

そんなこんだしてたら待ち合わせ場所に来ていた。

ハルは今日も可愛く笑顔を向けてくる。

その笑顔が今日はなんだか、腹ただしくて。

私、嫌なやつだな。

「お、おはよう…」

「昨日は何だって?長谷川」

いきなり来た。

こういう時空気読めないのに腹が立った。

「別に…」

「別にってことはないでしょ、なんかないと呼び出したりしないでしょーが」

黙れ。

「ほら、言ってみな?ハル先生が聞いてやるぞ」

黙れ。

「失恋したわけじゃないんだからもったいぶらないでさ」

プツン。

私の中でギリギリを保っていた細い糸が切れた。

…何様だ。

ハル先生?

いつから私の先生になったの。

「…だから何でもないって!うるさい!」

気づいた時には口に出していた。

ハルと喧嘩がしたかったわけじゃない。

ハルは何も悪くない。

誰も悪くない。

私が勝手に怒っているだけ。

それはわかってる。

でも余裕が無い時に、1番聞かれたくなかった人に聞かれたら。

引っ込んだ涙がまた、顔を出しそうだった。

なんで…っ。

「千夏…?」

気づくとハルは泣きそうな顔をしていた。

「…っごめん。先、行くね」

その場にいれなくて。

ハルの顔を見ることが出来なくて。

その場から逃げだした。