「〜♪フフフフーン」

「千夏、あんた気持ちが悪いよ」

「おうおう、僻みたまえ、私は今何を言われても機嫌が良いから怒らぬぞ」

「ごめん千夏、この前言ってた奇跡のパン手に入れたけどあたしの胃袋の中に消えていった」

「はっ!?それは無理だし、吐き出して」

「いや、食えねえだろ、汚いだろ」

奇跡のパンって言うのはハルの家の近くにできた行列の出来る1日360個限定のふわふわの食パンの間にとろとろのカスタードと生クリームがぎっしり詰め込まれた私がこの世で今1番お目にかかりたいパンのこと。

ずっとハルにお願いしてきてたのにこいつ!

裏切ったな!

「怒らないんじゃなかったの?」

「それとこれとは話が別」

もうなんなの、と。

怒りをあらわにしてたら。

「俺、そのパン屋さん知ってる!」

「俺も俺も!」

長谷川くんのグループが話に入ってきた。

「俺なんて昨日も食べたぞ」

「柴田の話はどっちでもいい」

ハル、めっちゃ態度悪。

ハルはクラスメイトの男子のことがあまり好きではないみたい。





「長谷川くんは食べたことあんの?」

「うん、母さんとパン屋のおっちゃんとが同級生らしくて、よく試作品とか奇跡のパンとかくれるんだ、特別に」

「えー、いいなぁ」

いいなぁ、いいなぁと。

スカートの裾をいじいじしながら言ってたら。

長谷川くんは少し考えたあと

「じゃあ高野、次持ってきてやる代わりに頼みがある」

「頼み?」

「放課後、教室で待ってて、その時話す」

「え、あ、うん…」

なんだろう、今言えないことなのか

放課後って…もしかして告白?!

うん、悪くない、だって、アーンしてもらう仲だし、割と仲いい方だし!

早く放課後にならないかな