その時颯汰が私を見た。
目が合ってしまい、今更そらせない。
颯汰は微笑み、口パクで何か言った。
えーっと……ってダメだ。
全然何言ってるのかわからなくて首を振る。
バカとか悪口を言ってるようではなさそうだった。
いつまでたってもわからない私を見て、颯汰は諦めたようだった。
少し呆れたような顔をしている。
え?私が悪いの?
わからないなんてバカだ、みたいな?
それは少し不服だった。
チャイムが鳴ったら何を言おうとしてたか聞こうと思い、その後は授業に集中できた。
そしてチャイムが鳴り、授業が終わると私が行くより先に颯汰が私の席へとやってきた。
「さっきなんて言ったの?」
「今日一緒に帰ろうって言った。」
「はぁ?そんなの口パクでわかるんけ………って、え?
まさかのお誘い?」
「まあそんな感じ。」
「なんでいきなり……」
「なんとなく優梨と帰りたいなって思った。」
少し照れたように笑う颯汰。
ああ、心臓に悪い。