屈強な門が近衛兵の手によって開かれ、濃紺の軍服に身を包んだ警備隊が馬の蹄を響かせながら架け橋を渡っていく。


一行はやがてバルザックの繁華街に差し掛かり、国民に存在をしらしめるかのように兵士の一人が高らかにラッパを鳴らせば、途端に町はざわめきに包まれた。


「きゃああ、エドガー殿下よ!」
「まあ、なんて今日も勇ましいの……!」
「寡黙なところが、また素敵だわ」
「ああ、エドガー様が国王になられる日が待ち遠しい……」


道行く女たちは色めきながら足を止め、先頭を行くエドガーに熱い視線を送る。


エドガーから半歩遅れて、ジルはリックとともに馬に揺られていた。


どんなに黄色い声を浴びようと、真っすぐに前を見据えるエドガーは見向きもしない。真昼の光に照らされ輝く癖がかった黒髪。黙々と前を見据える横顔は、確かに見惚れるほどに男らしく整っている。


国民からの信頼が高いほど、ジルの中の彼への憎悪が増していく。


じっとその横顔を見つめていると、ふいにこちらを向いたエドガーと目が合ってしまった。ジルは慌てて視線を逸らしたが、動揺したせいで体を揺らしてしまった。


くすぐったかったのか馬がブルリと鼻を鳴らし、リックが騎乗を整えるために手綱を握り直す。


「お前、動くなよ」


「すみません……」


真後ろからリックに睨まれ、心とは裏腹に謝る。


「何だよ、その目。悪いと思っていないだろ」


悪態を吐きつつも、エドガーの手前だからか、リックはそれ以上何も言わなかった。


――と、その時。