エドガーと入れ違うようにして数人の侍女が部屋に現れ、ジルは瞬く間に身支度をさせられた。


王子の近従となるからには、それなりの身なりが必要だからだろう。花の香りのする湯をはったバスタブで体の隅々までを洗われ、肩までの短い髪を無理やりに編み込まれる。


何着もあるドレスの中から好きなものを選べと言われたが、どれもボリュームのある裾広がりのスカートで、ジルは好みのものがないと頑なに拒んだ。


仰々しいドレスは動きにくく、クロウを連れて逃亡するときに困るからだ。小一時間粘った末、ようやくダークグリーンのエンパイアドレスに落ち着いた。エンパイアタイプであれば、ボリュームのあるスカートドレスよりは身動きが取りやすい。濃い目の色を選んだのは、宵闇に紛れやすいようにするためだ。




ようやく身支度が終わり部屋で一息ついていると、コツコツと再びドアをノックされた。


現れたのは、挑発的な眼差しをしたリックだった。


「ふうん。馬子にも衣裳だな」


ベッドに腰かけるジルを見て、リックが薄ら笑いを浮かべる。小馬鹿にされているようで感じが悪い。


「エドガー様に、お前に城の中を案内するように言われた。来いよ」