そう言われてみれば、わたしは何で知っているんだろう?


女はその理由もわからず、ただ首を傾げる。


『何で、かしら…?』


女にも理由はわからない。


ただ、確かに犬の鳴き声を聞いたことがあるような気がした。


『おいおい、ストーカーみたいな事は勘弁してくれよ。』


呆れたような男の声に、女は慌てて否定する。


「夢でも見たのかしら?」と言って、記憶の糸を手繰り寄せる。



『犬がうるさくて…美和ちゃんが眠れないって言って、わたしが、そう、犬を怒った…夢…』