「……欲しいって、

……食べたいって言われてるものを、どうしてあげちゃいけないの! 

『私じゃ駄目』だっていうから、しょうがないじゃない! 

忌々しいっ……吸血鬼の子飼いが、生意気を言うんじゃないよっ!」


「……っぐ……ぅっ!」
 

喜咲の掴んでいる場所――頸と右肩が、じゅうぅ……と嫌な音を立てていた。

じりじりと、焼かれているのだ。

まるで、焼きゴテを押し付けられているようだった。

あまりの熱さと痛さに、孝は顔を歪めた。


「あらあ? 威勢が良いのも、もう限界? 

……弱っちい人間は可哀想!」
 
孝は飛びそうになった意識をどうにか繋ぎ止め、必死にポケットを探った。
 



やっぱり自分は馬鹿だ。

刃物くらい用意しておけばよかったのに、



結局こんなものしか持ち合わせていないなんて……。