喜咲が、冷やかに孝を見やる。

「……そうだよ。銀司は今、物凄く飢えてるの。

苦しんでるんだよ。とてもじゃないけど、可哀想で見てられない。

……だから早く、私が人間を……」



「――違う!」
 

孝は激昂して声を張った。

「そんなの間違ってる! 

禁断症状なんて、断ち切らせればいいだけの話じゃんか! 

何でそれだけの事なのに、関係ない人を何人も殺すんだよ! 

こんなんじゃ、いつまで経っても終わらないだろう!」


「黙れ!」
 

喜咲は、孝の真下から火柱を立てた。

だが、孝はそれを容易に避けた。

喜咲に向かって駆け出す。
 

しかし、目暗ましに顔面に炎を吹き付けられ、一瞬怯んだ隙に、

孝はアスファルトに叩き伏せられてしまった。