「なぁに、もう諦めたの!」
 
喜咲は、孝の真横に火柱を立てた。

彼がうろたえる様を見るつもりだった。
 
しかし、孝は身動ぎ一つしなかった。

飛んだ火の欠片に左肩がじりっと痛んだが、

歯を食いしばって、何でも無いふうを装った。

意地でも動くもんかと思った。


「どういうつもりかな」
 
喜咲は、孝をからかうように笑う。

「……お前こそ、どういうつもりだよ」
 
孝は、喜咲を睨みつけた。

喜咲はまだ、にやにやと笑っている。

「まったく、君みたいな邪魔者が入ると思わなかったわ」
 
彼女は肩をすくめ、大仰に手を振ってみせる。