「あら、どうしてかな?」
 
喜咲は、再び歩み寄ろうとする。
 
すかさず孝は、「来るな!」と叫んだ。

だが、喜咲はどんどん近付いて来る。
 
咄嗟に孝は、青子の手を取って駆け出した。

喜咲がそれを追う。



「ごめん孝君、何か君の言ってたこと、半分くらい本当に思えてきた……!」

「半分じゃなく全部です! どうせなら全部信じて下さい!」

「分かった! あと、手放して欲しいな」
 
聞いた瞬間、ぱっと手を放した。

孝も、その方が走りやすかった。

「逃がさない!」
 
不意に、二人の間に火柱が立った。
 
避けようと身を捩り、孝が転ぶ。
 
青子はよろけたが、何とか持ちこたえた。

彼女は孝を起こそうと手を伸ばしたが、

「いい!」
 

孝は大声で言い、すぐ起き上がり、また二人は走り出す。