孝の後で、青子が「あ、玉野先輩」と嬉しそうに言った。
 
ベリーショートの髪の女性――喜咲が腕組をして、不機嫌そうに孝を見た。


「……そこをどいてよ。私、急いでるの」
 
喜咲はカツンと、靴を鳴らした。
 
それでも、孝はどかない。
 
喜咲が舌打ちをする。
 


その様子に、青子は困惑していた。

「青子ちゃん、迎えに来たよ……!」
 

喜咲は言った。

だが、明らかに彼女の態度はいつもと違った。

それを敏感に感じ取り、青子は小さく呻いた。


「ほら、どうしたの!」

「あの、先輩……私やっぱ、帰ります……」
 
しどろもどろに、青子は答える。
 

孝は、やっと分かってもらえた、とほっとしたが、状況は最悪だった。