「……はい。あの、あなたはもしかして、三輪青子さん……ですか?」
ためらいがちに尋ねると、彼女は驚いたように目を見開き、
「どうして分かったの?」と豪快に笑った。
「私ね、前に小夜ちゃんに君の写メ見せて貰ったのさ。
それでね、今君を見て、『あれー、もしかしてー?』と思ったんだよ。
孝君って言ったっけ?」
それまで、二人に面識は無かった。
よって、仮に青子が孝を見かけても、彼女が彼に声をかける必要など無い。
しかし、それでも気兼ねなく接触出来る。
屈託が無く大胆な、青子だからこそ出来る事だったのかもしれない。
孝は、それをとても幸運に感じた。
しかし、すぐに危機感が戻ってきた。
「あの、急な話で悪いんですけど、今すぐ逃げて下さい」