喜咲との対面から数分前、偶然にも、幸運にも、孝は青子に出会っていた。
不穏な音に人々が気付き、人だかりが出来始めた頃。
その中に、青子はいたのだった。
ようやく駅の出口を間違えた事に気付き、こちら側へ来てすぐの事だった。
孝は、人だかりから離れるように歩き、なるべく人に見られないように路地に向かった。
そこへ、青子から声をかけたのだった。
「あれ……ねえ、そこの君。
もしかして、君は小夜ちゃんの弟君だったりする?」
明るい女性の声に、思わず孝は振り向いた。
そこにいたのは、背の高い女の人だった。
かなり、美人の部類だと孝は思った。
そして何より、その人は胸が大きかった。
間違いない。
瞬間的に判断した。